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- 2025.6.26
宝仙学園高等学校女子部_氷室先生インタビュー

宝仙学園高等学校女子部さんとは、「身体表現」(現:キャラクタービルディング)という授業を通して、コロナ禍でのオンラインレッスンや演劇ワークショップ、新入生向けのウェルカムキャンプなど、さまざまな取り組みをご一緒してきました。
そのすべての場面で、いつもクリエイティブな提案をしてくださっているのが、ダンス部の顧問でもある氷室先生。今回は、そんな氷室先生に教育観についてお話を伺いました。
印象的だった取り組みは?
らな:これまでいろんな取り組みをしてきましたが、特に印象に残っているものはありますか?
氷室先生:やっぱり、ウェルカムキャンプですね。
3学年合同で、しかも4月という時期。新入生にとってはすごくハードルが高い環境だったと思うんです。
そのハードルをどうやって生徒たちが乗り越えるかという課題があった時に、「あ、ゆすけ(弊社代表)がつくる空間ならいけるな」って思ったんですよね。生徒たちが主体的にその壁を越えていける環境をつくってくれるって信頼があったので、TO MY HEROにお願いしました。
「身体表現」(現:キャラクタービルディング)の授業が始まったきっかけ
らな:「身体表現」という授業はどのように始まったんですか?
氷室先生:もともとは、ミュージカルをやっていたんです。でもそれはあくまで行事の一環で、ホームルームや放課後の活動としてやっていたんですね。
でもその時、「なんでこんなにいいことを授業時間内にできないんだろう?」って思ったんです。そこから、カリキュラムを改定して「身体表現」という授業を取り入れることにしました。
らな:もともとミュージカルの取り組みの中で、感覚的に“よさ”を感じられていたからこそ、授業として展開できたんですね。
「ゼロでいい」という考え方
氷室先生:新しくつくる授業だったので、まずは目的を作ったんですね。その中で「生徒同士のコミュニケーションのベースを“身体表現”でつくりたい」と考えたんです。
“身体表現”の基本的な考え方として、「プラスじゃなくていい。マイナスでもなくていい。ゼロでいい」というのがあるんですよ。
らな:えっ、それはどういうことですか?
氷室先生:例えば「自分はネガティブです」って言葉。どうしてもマイナスに捉えられやすいじゃないですか。
でみ、それって実は、自分や他人のことをよく見ているからこそ、比較して出てくるものでもあると思うんです。
そういう見方をすれば、ネガティブってむしろ“よく人を見ている”という長所にもなる。
だから「ポジティブになれ」って言うよりも、まず「今の自分でいい」とゼロに戻すことが大事だと思っています。捉え方を変えることですね。
らな:無理にプラスを目指すと、もとの性質を否定することにもなりますもんね。
氷室先生:そうなんです。
逆に指導をするとしたら、リーダーシップが強すぎて独りよがりになってしまう子には、「周りの声も聞いてみよう」と伝えます。それが“ゼロに戻す”ということ。
静かな子に「もっと声を出しなさい!」と言ってしまうと、その子のは苦しくなっちゃうと思うんです。なので、どの子の性質もそのまま大事にしていたいんです。
生徒たちに望む未来の姿
らな:生徒たちに、どんな人生を歩んでいってほしいと思っていますか?
氷室先生:今の世の中、不確定なことが多すぎるじゃないですか。大変なことばかりだけど、その中でも「自分で選ぶ」ことができる環境にいてほしいんです。
選べない状況ってやっぱりしんどいので、せめて「どう進むかは自分で決めた」と思える状態をつくってあげたい。
らな:選択する力そのものも育てたいということですね。
氷室先生:そうですね。そのためには、たくさんの大人と出会ってほしい。
私自身、父親が神主で神社の娘という特殊な環境で育ったので、子どもの頃からいろんな大人と話す機会が多かったんですよ。ダンスの先生にもたくさんの大人を紹介してもらいました。
親以外の、信頼できる大人から肯定された経験って、子どもにとってはすごく大きいと思うんです。
多様な価値観の中で育つこと
氷室先生:あと、私は「自分に対してイエスマンばかりの空間」がちょっと苦手で(笑)。
価値観が違う人たちと一緒にいるのが、私は好きなんですよね。
だから、全く私を知らない人のとこに行きたくなっちゃうんで、世界大会とか行っちゃうんですよ(笑)。
らな:それで、賞もとっちゃうんですね(笑)。
(女子部ダンス部REGULUS.さんは、イギリスのブラックプールで行われるUDO STREETDANCE WORLD CHAMPIONSHIPに日本代表とし出場し、3冠をとっています!)
そういう環境に飛び込めるのは、。生徒に対しても、自信があるんだと思います。
この子たちだったらどんな人に出会っても大丈夫って思っています。どんな評価を受けたとしても、ちゃんと自分たちの糧にして前に進んでくれる。そんな安心感があるんです。
らな:生徒たちにとっては、とても励まされる言葉ですね。
教師としての原点と理想像
らな:教員になったばかりの頃、大変だったことってありますか?
氷室先生:大変だったのは、自分自身のコントロールかもしれない(笑)。
ひとつの出来事にすごくイライラしたり、生徒の思いや状況を受け止めきれなかったり。でも今は、生徒のことや色んなことに対して待てるようになったと思います。
…だから、その時の生徒たちが偉大なんですよ。そんな私を許してくれたし育ててくれたから。
目指す教師像と未来への思い
らな:氷室先生が目指す教師像って、どんな姿ですか?
氷室先生:私の祖父が校長先生だったんです。だから、私の祖父みたいな先生です(笑)。私の祖父はもう他界しているのですが、父親からお通夜の時に、本当に夜通し生徒が来たと話を聞いています。生徒が長蛇の列だったと。きっと愛を送った分、返って来たんだろうなって思いました。
生徒には「結婚式には来なくていいけど、私の葬式には来てほしい」って言っています(笑)。
3次会までどんちゃん騒ぎの葬式をしてもらえたら、本望ですね(笑)。
未来への不安と展望
らな:最後に、今後の展望があれば教えてください。
氷室先生:展望はもちろんあります。色々新しいことにチャレンジしていきたいです。でも同時に、少子化の進行には強い危機感を持っています。
これまで当たり前だった宿泊行事や部活動などの体験が、今後は人数の関係でできなくなるかもしれない。学校同士が合同で活動する時代もすぐそこにあると思います。
だからこそ、子どもたちには「自分がいいと思うものを選択する力」や「多様な人と関わる力」を、これからもしっかり育てていきたいと思っています。
氷室先生、ありがとうございました!